文学ノート2017 上半期

「川というものは、海に流れ込む直前の一箇所で、奇妙に躊躇して逆流するかのように流れが鈍くなるものである」

(太宰治『津軽』)

 

「穿めもしない手袋を握ってあるいてるのは何の為めだい」

(夏目漱石『野分』)

 

 「人間にこの花の美しさがほんとに分るのかしら」

(川端康成『野菊』)

 

 

 

 

「そこにいるということが確実になったときから腐敗は進行する」

 (三島由紀夫『朝の純愛』)

 

「無はあらゆる存在より廣々と大きい自由な實在」

(川端康成『孤児の感情』)

 

「はっきり見えすぎるから幻覚だ、ということもありうる」

(三島由紀夫『獣の戯れ』)

 

 

 

 

「正直は我身の守り」

(樋口一葉『大つごもり』)

 

「世界は一つの強いリズム」

(川端康成『青い海黒い海』)

 

「自己の王國に主たれ」

(高村光太郎『聲』)

 

 

 

 

「本当に嬉しかった、本当に難有かった、本当に尊かったと、生涯に何度思えるか」

(夏目漱石『思い出す事など』)

 

 「一生は長う御座ります」

(樋口一葉『われから』)

 

「結果は死ぬまではわからない」

(武者小路実篤『棘まで美し』)

 

 

 

 

「刻刻の生を一ぱいに歩むのだ」

(高村光太郎『人に』)

 

 「舟は刻さえくれば向う岸へ着こう」

(司馬遼太郎『烏江の月』)

 

「なあに年が年中思っていりゃ、どうにかなるもんだ」

(夏目漱石『二百十日』)

小山和哉